コラム

伴田 良輔の猫家写真集「にゃんハウス。」ができあがるまで

2016.05.25

私がにゃんハウスを作り始めたのは、amazonの空き箱や宅急便の空き箱に猫が入っているのに気がついて「そんなに段ボールが好きなら家にしてあげよう」と思いつき、クレヨンで壁を塗ったり絵を描き、窓をあけてやったら結構かわいい家になったのが最初です。

できあがった段ボールハウスに猫たちが入って、顔だけ、あるいは足だけ、ときにはヒゲだけを玄関や窓から出しているのがおかしくて、写真を撮りはじめました。
どんどん家のバリエーションも増えて、煙突のある農家風、ホテル風、ケーキ屋、学校、教会まで作って猫の町みたいになってしまいました。それで作った一冊目の本が、日本とアメリカで出ました。アメリカでの反響は「こんな発想は考えてもみなかった」というのが多くて、びっくり。ぼくにとっては、段ボールに猫が入ってる姿からごく自然に出て来たものだったので。

それまで”猫の家建築家”という職業はなかったので、勝手に名乗りました。たぶん世界で1人でしょうね。猫が施主でぼくが設計師で施工業者。

今回の写真集「にゃんハウス。」の撮影では、新たに子猫のための小さい家をたくさん作りました。作ったのはいいんだけど、肝心の子猫がいない。子猫と言うのは2ヶ月くらいだけのものですから、あ、いたというときにすぐに撮らないとだめなんですね。SNSの”猫友”に呼びかけて、子猫さがしもしました。日本文学研究者のロバート・キャンベルさんのお宅ににゃんハウスを持参して、めちゃくちゃかわいいブリティッシュショートヘアードの子猫、夕吉ちゃんも撮影させてもらいました。「にゃんハウス。」の最初のページに”足”だけ窓から出してるのが夕吉です。ページをめくると顔がでてきます。

でもほとんどの撮影は神保町のぼくのスタジオに猫のためのセットを作って、飼い主に連れてきてもらいました。ケージから出てスタジオのセットの上に乗ると猫はたいていそわそわ落ち着かなくて、撮影どころじゃないんです。そこをがまんして、飼い主さんと一緒に猫に声をかけたり、猫じゃらしであそんだり、もうタイヘンでしたが、そのうちふつとねこたちが落ち着く。その瞬間を逃さず撮るのがぼくの仕事。猫の心理は大体わかるので、楽しかったですね。スタジオの隅に猫が入り込んで、どこを探しても見つからない時もありました。結局奥の奥から出て来たんですけど。

7月から3ヶ月、新潮講座で猫とアートをテーマに講座を受け持ちます。ルノアールからピカソ、藤田嗣治まで、猫はアーティストたちの創作の源泉になってきましたが、そんな猫の持つ魅力を掘り下げてみたいと思います。

(発売:左右社 定価:本体1,500円+税)

(伴田良輔)

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