コラム

静かな夜に天体観測!

美しく「星空」を撮影するには?

2015.07.23

星空の下の富士山を、超広角レンズとスローシャッターで撮影した写真です。

ポイントは、快晴の夜空に映し出された星と富士山だけでなく、富士五湖の一つ、精進湖の湖面に鏡のように映った『逆さ富士』と言われる風景や星にもあります。

広大な宇宙と富士山の裾野の広がりを、17mmという超広角域で撮影しています。ちなみに入門機に多いAPS-Cサイズの一眼レフでいうと、11mmくらいの画角のレンズになります。

撮影データは、シャッタースピード25秒、絞りはf3.5。感度はISO1600の設定になっています。マニュアルモードにして、この数値を目安に、絞り、シャッタースピード、感度をセットしましょう。最終的な仕上がりの明るさは、絞りと感度で調整します。

感度を上げると、画面がザラついてきます。高感度のざらつきが少なくなる補正をかけられますが、高感度ノイズ補正はオフにしておきましょう。高感度ながらもできるだけざらつきの少ない感度にするために、絞りは開け気味に、感度をできるだけ低めに設定しましょう。

このような写真は、快晴以外にもある気象条件が必須なので、なかなかカンタンには撮影できません。その気象条件とは、無風状態であることです。湖面は、少しでも風があると、水面がさざ波のように凹凸になってしまうので、このように美しい風景の反射をしてくれません。しかもスローシャッターでの撮影であれば、完全な無風状態での鏡のように平坦な水面にしか、このような美しい逆さ富士や星空は映らないのです。

完成度を高めるためには、カメラやレンズの良さだけでなく、撮影者の努力や技術、そして気象条件などすべてのタイミングが重なることが必要です。美しい一枚の写真に込められた奇跡や思いを感じながら、写真を眺めてみましょう。

どうやって撮る?流れるような星空写真

では、さらに感度を低くして、シャッタースピードを遅くしてみましょう。すると、星が線状に表現されます。シャッターを開けている時間が長ければ長いほど、星の軌跡も長くなります。この写真の撮影データは、シャッタースピードが約20分(1266.3秒)、絞りがf7.1で、感度はISO100です。長時間シャッターを開いて撮影していると、そこに映り込んだ風景もどんどん明るく露出されていきます。なので、地上の風景が露出オーバーにならないようバランスを取るために、絞りを絞って、さらに感度を下げて撮影する必要が出てくるのです。星は明るい光の点ですから、風景と星空を同時に撮影する時は、地上が明るすぎない場所で撮影しましょう。

そして、長い時間シャッターを開き続けるため、カメラのブレがはっきりと出るのが星空の風景写真のムツカシイところです。スローシャッターで星を撮影すると、ほんの少しの動きで、星がガタガタとブレた点になったり、地上の風景がブレてモヤっとした感じで写ったりしますので、カメラの安定には細心の注意を払いましょう。

シャッタースピードの設定は、30秒くらいまでですと、数値で直接設定できるカメラが多いですが、分単位のシャッタースピードの場合は、Bulb(バルブ)という設定にしましょう。これは、シャッターボタンを押している間、ずっとシャッターが開き続け、シャッターボタンから指を離すとシャッターが閉じるモードです。この設定にして、時間を計りながらシャッターの開いている時間の長さをコントロールしましょう。そのような場合、撮影中にカメラに触れて動かしてしまうことなくシャターを切るために、レリーズというリモコンを使うのがオススメ。最近では、スマートフォンやタブレット、パソコンなどと連動させて、カメラに触れることなく撮影できる機能があるものもあります。

カメラの安定に三脚は必須アイテム。カメラをしっかり安定させるためには、少なくとも、カメラよりも重い三脚を用意しましょう。
三脚の開脚部分に布のようなものを設置できる便利グッズを使って、何か重りになるようなものを置くと、重心が下がってさらに三脚全体が安定します。

意外と忘れてしまう注意点としては、手ぶれ対策に有効なレンズやボディーのブレ防止機能を、オフにしておくことです。超スローシャッターの時は、ブレ防止機能が繊細に働くことで、逆に細かなブレ状態をひき起こしてしまう場合があります。ブレは、三脚でしっかりと固定することで防いで撮影しましょう。

満月をきれいに写してみよう!


©Hiroshi Kawakami

夜空に浮かぶ月も、もちろん星の一つです。
でも、身近な割に、撮影が意外とムツカシイと思いませんか?

先ほどの2点は、新月の夜、月明かりのない中での撮影でしたが、月を入れた写真を撮ろうとすると、月が小さく写りすぎて物足りなかったとか、特に満月は、夜景と共に撮影しようとして、ただの真っ白な点になってしまったなんて失敗をされた方も多いかと思います。

月は、驚くほど明るい天体なのです。

ちなみに、この満月の撮影データは、シャッタースピードが1/500秒、絞りがf8.0で、ISO感度は400。レンズは、100~400mmのズームレンズに1.4倍のテレコンバーターをつけてAPS-Cサイズのカメラを手持ちで撮影しました。

まるで昼間のスポーツ撮影のような撮影データですが、それでも満月は、こんなに明るく写せるのです。

月のディティールを活かして撮りたい時は、くれぐれも明るい部分を真っ白に飛ばしてしまわないように気をつけましょう。

夕景に浮かぶ月を撮ってみよう!


©Hiroshi Kawakami
1/4秒、f9.0、ISO400

この写真は、日没後の夕景を撮影したものですが、この月の写真をよく見ると明るい部分は白く飛んでいますが、欠けている部分がうっすらと空に浮かんで見えます。
さらに、海辺でのスローシャッター撮影ですので、波が寄せて返す動きでブレて、水面が柔らかい印象に仕上がっています。
朝方や夕方の薄明るい時間帯には、こういう現象が撮影できますので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
(川上博司)

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